社会の中で、私たちがお互い気持ちよく生活したり、仕事をしたりするためには、各人相応の心づかいが必要になります。マナーや礼法は、人間が人生をより幸福に美しく生きていくための智慧であり、また思いやり(愛)の表現なのです。どんなに優れた才能があっても、マナーを欠いて周囲の人々に反感を持たれては、幸福な人生は望めません。早く基本的なマナーや礼法を身に付けることで、一層豊かな人生が開けてくるのです。
男性、女性を問わずマナーが大切なことは言うまでもありません。英語で紳士、つまり立派な男性のことをジェントルマンといいますが、これは礼儀正しい、優しい男性の意味です。また、女性は皆「美しくなりたい」と思ってお化粧したり、ファッションのセンスを磨いたり、たいへんな努力をします。その結果とてもきれになったとしても、優しい思いやりや他人への心配りができなかったり、言葉づかいが粗雑だったりすれば、誰もその人を美しいとは思わないでしょう。
そこで、本当に美しくなろうと思ったら、おしゃれや恰好良さだけでなく、周囲に行き届こうとする優しい愛の心を身に付け、自らをより美しく高めようとする美の心と、相手を尊敬し、すべてに感謝する礼の心と、自然や周囲の人と調和しようとする和の心を、常に意識していただきたいと思います。この愛、美、礼、和の心が、日本の伝統文化の結晶といわれるきものの中にこめられていることを発見して、「装道」を提唱したのですが、これは衣服の装いを技から術へ、礼から道へ高めて真の美しい人生の創造を目指すものです。
皆さんはこれから、長い人生を歩んでいきます。その人生の中で人に不快を与えれば、孤独に疎外されてしまいますが、マナーや礼儀作法を身に付ければ、人々に愛され、美しい、心豊かな人生を送ることができるのです。このように、マナーや礼儀作法は、幸せな人生へのパスポートであり、何ものにもかえがたい、あなた自身の財産になることでしょう。皆様の理想的な美しい人生の実現を心から応援いたします。